VOICEPRINTは何をするもの?その3
ギターの生音のニュアンスを再現するペダルVOICEPRINTですが、その基礎テクノロジーとなっているのがIR技術です。
ケンパーやLINE6など、エレキギター界隈ではIRが大流行で、アンプヘッドやキャビネットの鳴りを再現するのにIR技術が使われています。IRとはインパルスレスポンスの略で、乱暴に言ってしまえば、ある機材の音響特性を表すデータです。VOICEPRINTの場合、このデータを元にして、アコースティックギターの生鳴りを再現しています。
一般的にIRデータの制作には、本格的なプロ用マイクやプリアンプなどを使い、プロのエンジニアが時間を掛けて収録するものです。しかしVOICEPRINTは、iPHONEアプリと内蔵マイクを使って、簡単な手順で音響特性を測定します。その際VOICEPRINT本体を通してピックアップからの信号の音響特性も測定。その2つのシグナルの差を捉える事で、演奏時にピックアップの信号を元に、正確にそのギターの生音のニュアンスを再現する事が可能になるのです。
L.R.Baggs社では、このIRデータを”ボイスプリント”データと呼んでいます。
iPHONEに専用アプリAcousticLiveをダウンロードしたら、iphoneをギターの前に置き、VOICEPRINT本体とギターを接続します。
そして、iphoneの指示に従ってギターを鳴らす。その作業はわずか10分ほど。外部マイクやオーディオインターフェース、プリアンプなどの外部機材は一切必要ありません。一人で静かになれる場所さえあれば、すぐにボイスプリントIRデータを作成する事ができ、そのままVOICEPRINTにデータとして保存できます。
以下のビデオでその手順をご覧下さい。
一旦ボイスプリント・データを作成したら、VOICEPRINTに保存できるので、通常のエフェクター感覚でライブなどに使う事ができます。しかしiPHONEはこのデータ作成に使われるだけでなく、収録した後もVOICEPRINT本体と連携して、色々なサウンド造りができるのも特徴です。
精密なデジタルデータなので、フィードバック制御やイコライザーなどを詳細にコントロールし、それをプリセットとして何種類も保存できます。プリセットしたデータをライブでそのまま使うのはもちろん、iphoneとは常にBluetoothで接続しているので、ライブ中にリアルタイムでiphoneからイコライザーを操作し音質を変える事もできます。
ここまで聞くととてもデジタル的な感じを受けますが、実際に鳴る音がものすごくナチュラルである点が一番画期的なのかもしれません。ギタリストにとってはそれが最も重要なのですから。L.R.Baggsが開発に3年も掛けたのも、いかにそれまでのアナログ感覚を失わずにこの音を実現するか、という点にあったと思われます。
次回は、そのiphoneからコントロールできる機能についてお伝えします。